お留守番

共働きの家庭で暮らすのだから、
ぴーすは昼間どうしても一人ぼっちになってしまう。
ぴーすを留守番上手に育てる、これが僕たちの最大の課題であった。


「お留守番上手に育てるコツ」なんて本を読むと、
「分離不安でワンワン咆え続ける」だの
神経症で尻尾を追いかけてグルグル回り続ける」だの、
初心者を脅かす事例がさまざまに書いてある。


ひゃー!
ぴーすはただでさえ尻尾が短いんだからー、
いつまでたっても尻尾に追いつかないじゃん!
(「中野友加里のドーナツスピンになっちゃう?」妻は想像をめぐらす)


そんなわけで、僕たちは、
本に書いてあったように、留守番の時はおもちゃにおやつを仕込み、
ぴーすがおやつに夢中で気づかぬうちに出かけるなどしていた。

最初のうちはうまくいっていた。しかし、
いずれカギをかける音が外出のサインだと分かってしまった。
カチャン!の音にぴーすはワンなどと咆えるようになったのだ。


ぶ・ん・り・ふ・あ・ん?
ど・ー・な・っ・つ・す・ぴ・ん?
(頭の中には二つの言葉がコダマした)


かわいそうなぴーす、一日中グルグル回り続けてる?
それとも?
忠犬ハチ公よろしく一日中お座りして帰りを待っている?



僕たちはビデオに録画して確認してみることにした。
ある日の帰宅後、キチンとお座りして待っていたぴーすにほっとして
まず夕飯を与え、早速ビデオ再生してみた。

    • -

丸い穴空きのおもちゃからおやつを取り出そうと、
必死に舌を突っ込んでいるぴーす。
突然頭をもたげ、立ったままじっーと耳を澄まし始めた。
(実際このとき僕たちは廊下を歩いている)

カチャン!
ぴーすはそのままの姿勢で一言「わん!」と咆えた


さて、そのあと。。。


再びおもちゃに舌を突っ込み、仕込まれたおやつを食べ始めた。
僕たちの外出など何もなかったかのように。
「わん!わわん!」と咆え続けることもなく、
尻尾を追いかけることもなく、おやつ“だけ”に夢中になっている。

食べ終えたと思ったら座り、うしろ足で耳の裏を
カキ、カキカキカキカキ、カキカキカキカキカキカキカキ・・・
(どんだけ痒いんや?ってくらい)掻いた後、
おおあくび!を一発。
で、スタスタとベッドへ。

そのまま寝る?と思いきや、
忘れ物を捜すかのように、またおもちゃへユーターン。
まだおやつが残ってないか?入念にチェックしているらしい。
クンクン、クンクンクン、クンクンクンクンクンクン・・・
チェック終了!

また、おおあくび!
で、ベッドへドンと飛び込んだと思ったら今度は一気にグー。
そのまま大熟睡!
テープの終わりまで微動すらまったくなし!

    • -

この間約5分。
残り85分は、ぴーすの寝姿しか映っていなかった。


以来、我が家では、出かける際のぴーすの「わん!」は、
ぴーす語の「行ってらっしゃい!」だと信じている。


◆ぴーす「お留守番は静かでゆっくり寝られるよー」